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ITエンジニアって、何をする人? ゲームを1本つくって、中身を全部見せます

いきなりですが、ひとつ数字を出します。

男子中学生が「将来なりたい職業」の1位は、ITエンジニア・プログラマー。

ソニー生命が2026年6月に全国の中高生1,000人に聞いた調査の結果です。前の年は5位でした。それが一気に1位。調査が始まってから2回目のことだそうです。

もし君が「ゲームをつくる人になりたい」と思っているなら、まず知っておいてほしいことがあります。君だけじゃない、ということ。そして、たぶん君が思っているより、その仕事は面白い形をしている、ということです。

でも、こう思っていませんか

「どうせAIが全部つくっちゃうんじゃないの?」

そう思っているのは君だけではありません。ニフティキッズが小中学生1,668人に聞いた調査では、74.1%が「10年後になくなってしまう職業がある」と答えています。なくなると思う職業の1位は翻訳家(54.4%)でした。

正直に書きます。この心配は、的外れではありません。

先に白状しておくと、ぼくはゲーム会社の人ではありません。ふだんは教室やお店で使う業務用のアプリをつくっているITエンジニアです。予約を受けたり、名簿を管理したり、請求書を出したり。ゲームとは似ても似つかない仕事に見えると思います。

そのぼくが、毎日AIに手伝ってもらいながらアプリをつくっています。昔なら何日もかかった作業が、いまは数時間で終わることがあります。

でも、実際につくって公開してみて分かったことがあります。それを説明するより、つくったものを見てもらったほうが早いと思いました。

というわけで、ゲームを2つ置いておきます

EmRaise Lab という、実験用のサイトがあります。ぼくが「こういうのがあったら面白いかも」と思いついたものを、小さくつくって置いておく場所です。いまは2つ公開しています。どちらもスマホで遊べます。

SCAN BATTLE VS

身のまわりにある商品のバーコードをカメラで読み取ると、そこからファイターが1体うまれます。お菓子の袋でも、ノートでも、シャンプーのボトルでもいい。読み取った番号によって、出てくるキャラも色も変わります。

そのあと、力・守備・スピード・運にポイントを配って、通常攻撃・必殺技・防御の順番を考えて戦います。スマホ1台を友達と交代で使う2人対戦です。

ひとつだけルールがあります。同じバーコードからは、いつでも同じファイターが出ます。何回読み直しても変わりません。これはあとで大事な話になります。

Rally Labyrinth

3対3のバレーボールです。ただし、コートの真ん中に回転する板があったり、ランダムでアイテムが飛んできたりします。

レシーブとトスは仲間が勝手にやってくれるので、君はジャンプ、スパイクの打ち分け、ブロックだけを操作します。5点先取。

先に遊んでもらったほうが、このあとの話がずっと面白くなります。

EmRaise Lab で遊んでみる

ゲームの中には、5つの「考える仕事」が入っています

遊びましたか。では、中身の話をします。

「ゲームをつくる」と聞くと、絵を描いたり、コードを書いたりする場面を想像するかもしれません。でも実際にいちばん時間を使うのは、その前に考えることです。5つ紹介します。

そしてここが大事なところなのですが、この5つは、ぼくが業務用のアプリをつくるときにやっていることと、ほぼ同じです。予約システムだろうがバトルゲームだろうが、考える順番は変わりません。だからゲームを1本つくれば、ITエンジニアの仕事のかなりの部分を見せられる。そう思ってこの記事を書いています。

① まず「約束」を決める

さっきの「同じバーコードからは、いつでも同じファイターが出る」というルール。これ、最初に決めました。

なぜだと思いますか。

もし読み直すたびに違うキャラが出たら、お気に入りを見つけても、もう一度会えないからです。「このバーコード、いいやつ出た!」と思っても、次の日には別人。それではガッカリしますよね。

こういう「こう動きます」という約束を、仕様(しよう)と言います。つくる人は、まず「何を変えられるようにして、何を絶対に変えないか」を決めます。SCAN BATTLE VS では、キャラと色は番号で決まってしまうけれど、ポイントの配り方と作戦は自分で選べる。ここを分けたわけです。

② 道具にまかせる仕事と、自分で決める仕事を分ける

カメラの映像からバーコードの数字を読み取る部分は、ZXing という他の人がつくった部品を使っています。こういう部品をライブラリと言います。

いちから全部つくる必要はありません。むしろ「どこを人にまかせて、どこを自分でつくるか」を選ぶのが腕の見せどころです。キャラの決め方やダメージの計算は、このゲームだけのものなので自分でつくりました。

③ 同じ材料に、同じ計算をする

「同じバーコードなら同じファイター」を実現する方法、想像がつきますか。

読み取った番号を、ハッシュという決まった計算にかけて、数字に変換します。その数字から、レア度 → キャラ → 色 の順に決めていきます。計算方法が決まっているので、同じ番号を入れれば必ず同じ答えが出る。これを決定論的(けっていろんてき)と言います。

ちなみに、バーコードから商品名や値段を調べているわけではありません。数字をキャラ選びの材料に使っているだけです。

④ 算数を、ゲームに変える

ここが個人的にいちばん楽しいところです。ダメージの計算式を見せます。

ダメージ = max(1, 4 + 攻撃する側の力 − 相手の守備)

「max(1, …)」は「かっこの中を計算して、1より小さかったら1にする」という意味です。やってみましょう。

攻撃する側の力が6、相手の守備が3だとします。

  • 4 + 6 − 3 = 7ダメージ
  • もし相手が防御していたら、半分にして 4ダメージ(小数は切り上げ)
  • 必殺技「グレートパンチ」なら力が1.5倍になって9。4 + 9 − 3 = 10ダメージ

……これ、学校でやっている計算ですよね。

そうなんです。ゲームの中身は、かなりの部分が算数でできています。「切り捨てにするか切り上げにするか」「0より小さくなったらどうするか」まで、ぜんぶ自分で決めます。決めないとバグになります。

そして、ここで一歩ふみこんだ工夫をしました。ゲームの中で、計算の途中を見られるようにしたのです。「なぜこのダメージになったのか」が分かると、次にどう配分すればいいか考えられるからです。答えだけ見せるより、そのほうが面白い。

⑤ 答えを先に出して、あとからかっこよく見せる

バトルの演出、光ったり斬撃が飛んだりしますよね。あれ、実は結果が決まったあとに再生しているだけです。

順番はこうです。まず「誰が何をして、何ダメージだったか」を全部計算して記録する。そのあとで、記録どおりにアニメーションを動かす。

だから演出をスキップしても、音をオフにしても、ダメージは1ミリも変わりません。もし演出の途中でダメージを決めていたら、スキップした人と見た人で結果が変わってしまいます。「計算する仕事」と「伝える仕事」を分ける。これはゲームに限らず、アプリをつくるときの基本です。

ここが、いちばん言いたかったこと

最初の質問に戻ります。「AIが全部つくっちゃうんじゃないの?」

このゲーム、実はAIにかなり手伝ってもらってつくりました。プログラムを書く部分も、動作チェックも。

じゃあ、ぼくは何をしていたか。

遊んで、「バトルが速すぎて何が起きたか分からない」と気づいて、それを言葉にしていました。「戦闘の速度を選べるようにしよう」「スマホのときはファイターの紹介を上に置こう」「効果音は最初オフにしておこう」。そういう判断です。

できあがったものを遊んで、「なんか違う」と気づくところは、いまのところ人間の仕事です。そして気づいただけではダメで、「どう違うのか」を言葉にしないと直せません。

つくる流れはこうなっています。

遊んで気づく → 言葉にする → つくる → 確かめる

ここで、君に伝えたいことがあります。

君がいまゲームを遊びながら、「ここ、もっとこうだったらいいのに」と思う瞬間があるはずです。あの操作がめんどくさい、この説明が分かりにくい、ここでこう光ったら気持ちいいのに。

その瞬間、君はもう仕事の一部をやっています。いちばん最初の、いちばん大事な部分を。

調査でいちばん面白かった数字

最初に出したソニー生命の調査には、もうひとつ面白い結果がありました。中学生が「将来したいこと」です。

  • 好きなことを仕事にする …… 49.0%
  • 安定した毎日を送る …… 47.5%

ほぼ同じ。みんな、両方ほしいんです。当たり前ですよね。ぼくもそうです。

そしてニフティキッズの調査では、なりたい職業を選んだ理由の1位が「好きなことだから」。さらに「そもそも仕事って何だと思う?」という質問の1位が「人の役に立つこと」(41.7%)でした。

好きなこと。人の役に立つこと。この2つは、けんかしません。

ぼくがやっている事業には、こんな言葉を置いています。

好きが得意になり、得意が価値になる。

好きで触っているうちに、気づいたら人より少し詳しくなっている。その「少し詳しい」が誰かの役に立ったとき、それが仕事になる。順番はいつもこれだと思っています。先に「役に立つこと」を探しにいく必要はありません。

今日からできること

EmRaise Lab には、それぞれのゲームに「つくりかたの解説」のページを用意しています。コードを知らなくても読めるように書きました。ダメージ計算を自分でいじれる小さな実験もついています。

その最後に、5つの質問を置いています。作ってみたいアプリを何かひとつ思いうかべて、紙に書きながら考えてみてください。

  • 誰が、どんな場面で使う?
  • 同じ入力なら、いつも同じ結果にしたい?
  • 結果を計算する順番で、答えが変わる?
  • 友達に見せていい情報と、秘密の情報は何?
  • 音や動きがなくても、結果を伝えられる?

図書の記録でも、部活の対戦表でも、持ち物チェックでもいい。紙に画面を描いて、友達に「使うフリ」をしてもらうと、説明が足りないところがすぐ見つかります。

これ、プログラムを1行も書かずにできます。そして、実際の仕事でもいちばん最初にやることです。

ゲームを遊ぶ つくりかたを読む

このサイトについて

M-aple は、福岡県粕屋町を拠点に、子どもの学びに関わる仕組みをつくっている事業です。習い事を探せるサイトや、教室の運営を助けるアプリをつくっています。EmRaise Lab は、その横で「まず試してみる」ための実験室です。

つくったものが正式なサービスに育つこともあれば、実験を終えて公開をやめることもあります。うまくいかなかったものも含めて、やってみないと分からない。それはゲームづくりでも、たぶん進路でも同じだと思っています。

保護者の方へ。お子さんが「ゲームをつくる仕事がしたい」と言い出したときに、何から触れさせればいいか迷われることがあるかもしれません。まずは一緒に遊んで、「ここどうなってるんだろうね」と話してみてください。解説ページは、その会話の材料になるように書いています。

出典

本文中の数値は上記の公表資料によります。記載は2026年9月時点のものです。

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